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広島高等裁判所岡山支部 昭和33年(ラ)18号 決定 1958年10月17日

抗告人 河上春子

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告理由の要旨は別紙記載のとおりである。

よつて、案ずるのに、戸籍上の名でないものを永年通名として使用していたため、戸籍上の名を用いるときは、却つてその者に対する同一性の認識を害し、社会一般にも支障を与えるような場合には、戸籍上の名を通名に変更する正当な事由があるといえるであろう。しかし、本件についてみると、抗告人は昭和二十六年○月○○日生れの幼年者であるから、たとえ抗告人主張のように従来戸籍上の名「春子」を使用せず、通名「京子」を用いていたとしても、その使用期間は左程長期に亘るともいえないし、またその社会的使用分野も限られた分野であるといわねばならぬ。なるほど、抗告人主張のように、いま戸籍上の名を使用するときは、抗告人自身において不便不都合を生ずることがあるかも知れないが、それは幼少者なるが故に招来すべき事柄であつて、一時的な障碍に過ぎないものといえよう。従つて、上記事情を勘案すると、本件抗告理由をもつてしては、未だ戸籍上の名「春子」を使用することが、却つて抗告人に対する同一性の認識を害し、社会一般に支障を与えるものとするに足りないものというの外はなく、他にこれが変更を許すべき正当の事由も認められない。

よつて、本件名の変更を許さないとした原審判は正当であり、本件抗告は理由がないから、これを棄却すべきものとし、主文のように決定する。

(裁判長裁判官 高橋英明 裁判官 高橋雄一 裁判官 小川宜夫)

別紙 抗告の理由

申立人の「春子」という名は戸籍上に記載されておるのみで生来京子と呼んでおり本人はもとより世間でも京子と信じ京子と呼んでいる。しかるに、幼少なるがため、社会生活上著しい不便がないからという理由のもとに却下されたが、これは今後の生活上不便であるから、此度抗告人は幼稚園を終えて小学校に入学するに際し現在まで使つている通名京子を使用せず、使用したことのない戸籍上の名春子を使わなければならないとすれば、誰も春子が抗告人と同一人であることを信じてくれず、抗告人も自分の名が急に変ることは非常に不便を感ずるので、これは戸籍法第百七条弐項に名を変更する場合の正当な事由に該当すると思料されるので、原審判に不服であるから、特別家事審判規則第六条壱項により本抗告に及んだ次第である。

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